わが日本教育再興連盟の代表理事である陰山英男先生に、学生事務局からインタビューをさせて頂きました。陰山先生は、現在、教育再生会議の委員や中央教育審議会・教育課程部会の委員も務めていらっしゃいますが、多忙な日程の中から、本連盟と学生のために時間を割いていただきました。陰山先生の教育観、本連盟立ち上げの趣旨など、たいへん興味深いお話をうかがうことができました。

インタビュアー・編集菅野祐太(早稲田大学2年)
インタビュアー江頭里奈(お茶の水女子大2年)
インタビュアー松本大地(東京大学2年)
編集山下庸介(早稲田大学1年)

今、陰山先生は教育のどういったところに問題意識を持たれていますか。

教育問題は昔から議論されてきました。でもその一方、現在の教育問題は二重構造になっているために、やればやるほどおかしくなってきていると感じています。私は、この二重構造が問題を複雑にしているのだと考えています。つまり確かな問題が起きているのに、その分析が誤っているので、対策も誤ってしまうのです。

今一番の問題は、子どもの生活習慣の崩れです。そこに最大の問題があるのですが、今までそれが理解されませんでした。その生活習慣の問題を解決しなければ、全て対処療法的になってしまいます。教育問題をしっかりと分析していないのに対処療法的に診ていっても、結局長期的な視点で見た教育問題の解決にはならないのです。

問題なのは、教育問題は簡単にいえば教師の問題だと矮小化されています。もちろん、問題のある教師が増えているというのも事実でしょう。ですから、教師を動かそうと思って、研修制度など色々な制度を作るのですが、制度というのは、粗く言えば子供たちと関わらない時間を増やすということです。だからやればやるほどおかしくなってしまいます。そういう面から言うと、免許の更新制もやり方によっては非常に危険であると考えています。

どうして教育再生会議に参画しようと思われたのですか。

教育再生会議に参画するかどうかについては、実はすごく迷っていました。実は、7割方断ろうと思っていました。最近は、かなり変わってきて、がんばる教師を応援することが必要だという認識が広まってきましたが、ほんの半年くらい前は、とにかく教師が悪いという声ばかりでしたから。すると、今度の会議も教師が悪いという認識で動く会議になってしまう危険性が高いので、教師として参加するとなると、苦労するのは目に見えていると思っていました。教師の立場を強行に主張すれば、ガチンコ勝負になって孤立してしまうし、慣れ合うと、それは僕にとっては今までいた世界に対する背信行為になってしまいます。それで、立命館小学校の校長先生や師匠である岸本先生はじめ、周囲の学校関係者に相談したところ、意外なことにみんな応援してくれました。みんなが行け行けと言うのです。それを聞いて、参画しようと決意したのです。そして、矢面に立ってみて、そこから現場の意見を伝えようと思ったのです。

教育再生会議の中で陰山先生の声は十分に通っていますか。

今は、五分五分といったところでしょうか。完全に通っているとは言えないですが、少しずつ理解してもらえています。それは、予想よりはだいぶいい状況だと思っています。ただ、それは僕だけの力では決してなくて、東大の小宮山総長や門川教育長など、公立学校に比較的近いところにいる方の働きかけが大きいです。小宮山総長の教育院の提案は、非常にシャープですし、教育内容を抜本的に見直す視点を持っており、問題の本質を突いていると思います。また教育再生会議の中で、だんだんと民間の人も僕がやってきた取り組みを認めてくれるようになってきました。それによって、今まで問題だった教育問題の分析間違いというのが、だんだん修正されてきたと言えます。そういったところを考えますと、行ってみて良かったと思います。

陰山先生がこれからやっていきたい活動について教えてください。

今年のテーマの一つは、このNPO法人日本教育再興連盟をきちんと軌道に乗せることです。これは、後で触れることにします。もう一つは海外展開したいという思いがあります。4月から中国に行って、中国の学校で陰山メソッドを広めてこようと思っています。それから6月にNECCというアメリカのコンピューターを使った学会がありまして、そこで今までやってきたコンピューターを使った学習法の発表をしたいと思っています。あとは、イギリスとフィンランドに9月に視察に行きたいと思っています。もう一つは、教材づくり、授業づくりをやっていきたいと思っています。

どうしてNPO法人日本教育再興連盟を作ろうと思われたのですか。

さっき言ったような二重の問題を解決するためです。一つの問題としては、社会が学校現場を誤解しているという問題があります。その中には、マスコミの影響などもあるでしょう。しかし、その原因のもうひとつの原因は、一般の学校や教師からの発信力が弱いことだと考えています。今まで現場の教師は、教師同士で、何々方式がいいとか言い合って、お互いを批判しあっていました。そしてそこだけで、終わっていたのです。まるで、狭いコップの中でのケンカをずっとやっているようなものでした。しかし、その結果学校が子どもを伸ばすシステムになってこないため、結局教育実践力は総体的に上がってきにくかったのです。大切なのは、批判しあうのではなくて、学校現場の実態や学校の実践をアピールしていき、社会の信頼を確かなものにすることでした。ですから、がんばっている先生の活動を社会に紹介し、また一方で社会の見方を現場に伝えることで、社会と一体となった教育再興を果たしたいと考えて、日本教育再興連盟を作ろうと決意したのです。

NPO法人日本教育再興連盟にこれから具体的にどんな活動を期待しますか。

色々なところに埋もれている教育実践を掘り起こして発信するということをやってほしいですし、やっていきたいです。また、家庭や地域の方々にも、より広く教育に対して関心を持ってもらいたいです。だから教育実践の創造・発掘・実践のシステム作りをしたいと考えています。

実は、いい授業をしている教師は全国にかなりいます。でもそういう人は自己完結してしまっています。そのため、そういった良い授業実践を行っている教師が全国に情報発信してそれを共有し、全体を高めていくというノウハウを先生たちに身につけてほしいと思っています。そういったことをNPO全体でやっていきたいと思っています。過去もそうした動きはありましたが、他の指導方法に対する批判が絶えず強くあり、そのために素朴な実践は、広がらないまま終わってしまっていたのです。そうした実践を掘り起こし、批判するのではなく、発信できるレベルにまで高めてもらい、教育界全体の発展の土台となってほしいのです。

NPO法人日本教育再興連盟の役割として教育意識の拡大があると思うのですが。

今のマスコミというのは基本的な習性として物事を暗く描きます。続けて読んでもらったり視聴してもらうには、そうするしかないからです。ですから、それはそれでいいと思います。ただ僕は、教育は基本的に面白くて楽しくて明るいものだと考えています。今の教育に一番必要なものは、教育を明るく楽しい、本来の在り方に戻すことだと思います。近いイメ-ジがあるとすれば、それは祭です。ですから、そこのところをストレートに多くの人達に知ってもらうためにも、昨年のイベント名を「教育夏祭り」にしました。「教育はお祭りだ」というイメージを持ってもらうことによって、マスコミが作っている学校のイメージの対極としての教育のイメージを作りたいと考えたのです。

マスコミが報じる教育の姿ひとつの教育の姿ですが、お祭だというイメ-ジを強く打ち出すことで、教育にかかわろうとする人々の力を引き出し、大きなうねりになってくればいいなと思います。

今、教育は各家庭の個別な取り組みという面がどんどん強くなっていますが、みんなですべてを伸ばすという方向に向かうことで、社会も活気を取り戻すことができるのではないでしょうか。教育夏祭りに関しては、将来東京ドームでなんてことを思っていますが、とりあえず武道館でやりたいと思っています(笑)

陰山先生が今後、具体的にNPO法人に日本教育再興連盟でしていきたい活動は?

この団体はボトムアップをするところですので、みんながもっているものを引き出すということをしていきたいです。具体的に申し上げますと、自分の実践を文章にできる教師を100人程度育てたいです。「教師としてこんな仕事やってこんな風に伸びた」という経験を保護者、教育学部の学生さん、一般の学生さんに話をします。すると、彼らが核になって、各々の地方に散ります。その上で、地方のおじちゃんおばちゃんであるとか、教育委員会であるとか、同僚に広めてもらって、もうちょっとみんなにホントのところ見てもらおうよという風になればいいと思います。

あとは、教育祭りの地方版のようなものがどんどん出てくればいいと思います。

学生が教育に関わっていくことについては?

学生は学問だけではなく、もっと現場を体験してほしいと思います。教育は面白いのです。出来たら学生たちもどんどん授業をやったらいいと思います。楽しいですよ。授業というのは、ロックコンサートみたいなもので、子どもたちと阿吽の呼吸で作っていくものです。ですから、それが成功した時の恍惚感はなかなかのものです。それを早く体験してほしいなと思います。

当連盟で活動する学生たちに望むことは何ですか?

教員になりたいと思っている人が多いと思うので、まず多くの現場に入っていって教育の面白さを知ってもらいたいです。教育というのはお祭りだからそれを楽しむ方法を覚えてもらって、実際入ってみて、教育というお祭りを盛り上げていってもらったら嬉しいです。現在、学生事務局が取り組もうとしている、学生を教育現場に送るというシステム造りを継続してほしいと思います。

また、教育の中核になるのは教師なのですが、教育というのは学校だけではなくて、各家庭や地域も入ります。例えば自分の社員達の家庭をどう考えるかとか、社員教育をどうするのかとか、教育そのものは人が人として成長してくことなので、企業はもちろんどの分野にも当てはまります。人間が人間として成長していくということについて、いろんな人達が入ってきてくれればいいなと思います。僕らは政治家ではないから僕らにできないことは河村先生、鈴木先生たちに頑張っていただき、僕らは実践をしていきます。そして学生さんたちに盛り上げてもらいます。それぞれの持ち場でネットワークを組めたらいいと思います。

最後にこのインタビューを見てくれた方々にメッセージをお願いします。

現場の教員・政財界の方々・マスコミ・地域の方々・保護者・学生などの教育に思いを寄せる全ての人に手をつないでほしいと思います。社会に対する考え、未来への見方、みんな違います。でも、子どもが伸びるというのは、みんなを元気にします。ふだんは論争している人たちが、子どもたちを前にしたときは、成長する子どもの姿を見て、そこはみんなで守っていこうとする。教育は信頼をエンジンに成長するみんなの取り組みです。ですから、みんなで一緒に教育について考え、具体的に行動するための核となる団体を作っていきたいと考えています。是非応援してください!

陰山先生、お忙しい中、お時間取って頂き、本当にありがとうございました!!
NPO法人日本教育再興連盟学生事務局 一同