従来の教育観を変えていく。そういった思いを持った大学生達が主体となって、今回のプロジェクトは始まりました。 教育の専門家ではない、市民一人一人が、「教育」を新たに捉え直し、自分たちに出来ることを明らかにしていく。 その思いを実現するために、2008年5月24日、東京大学五月祭にて、各界の著名人と大学生によるパネルディスカッションを開催致しました。 当日は600人を超える方々にご来場いただき、大盛況のうちに終了いたしました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。
目次
【1】登壇者の紹介 | 【2】フォーラムの概要 | 【3】来場者インタビュー | 【4】登壇者インタビュー
登壇者の紹介(敬称略)
○陰山英男(立命館大学教授・立命館小学校副校長兼任)
○清水たかみ(杉並区立和田中学校 地域本部事務局長)
○鈴木寛(参議院議員)
○高見のっぽ(俳優・作家・歌手)
○長崎宏子(オリンピックスイマー)
○尾崎拓洋(学生代表)
○古田雄一(学生代表)
○市原大輝(学生代表)
フォーラムの概要
第一部
登壇者:陰山英男・高見のっぽ・長崎宏子・尾崎拓洋・古田雄一
第一部では、「子どもと関わる」ということについて、議論を深めていきました。 高見のっぽ氏の「小さい人(子ども)と大きい人(大人)は、常に対等な関係」であって、 「対等であれば本当に良い関係を築ける」などのご意見が印象的でした。 また、「大きい人(大人)は、常に小さい人から学ばれていることに責任を持って行動しなければならない」というご意見に、 陰山英男氏が「子どもの知力やいのちの力をきちんと受け取れるようにしていくべきだ」とおっしゃっていました。 これらの議論を通じ、教える側の一方的な教育ではなく、きちんとお互いを尊重し、 関係を重んじたコミュニケーションとしての教育の重要性を再認識しました。
第二部
登壇者:清水たかみ・鈴木寛・尾崎拓洋
第二部では、参議院議員である鈴木寛氏と、 杉並区立和田中学校の地域本部事務局長の清水たかみ氏に、 大学生を交えたディスカッションを行いました。 和田中学校の取り組みの紹介に始まり、親子や教師生徒のタテの関係でもなく、 友達同士のヨコの関係でもない「ナナメの関係」をキーワードに、 アマチュアによる学校の活性化の提案がなされた後、 話題は学校ボランティアに。学生側からの初めての学校ボランティア経験の話や、 過去に暗くおどおどしていた学生が児童から相談を持ちかけられ、 いじめを発見した土曜寺子屋での例などを通じて、 どんな人でも「小さい人」の役に立てることを強調し、「小さい人」のためにできる第一歩の意義を唱えました。
第三部
登壇者:陰山英男・清水たかみ・鈴木寛・高見のっぽ・長崎宏子
第一部、第二部の内容を踏まえて、自分はどのように教育にかかわることができるのだろうと考えている方のために、 様々な教育実践を紹介しました。NPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也氏、 弁護士の坪井節子氏のチャイルドライン、NPOカタリバ、キッザニアの取り組みなど、 どんな環境にいても、自分なりの教育ができる、様々な可能性を提示しました。 また、シンポジウムの途中にのっぽさんによる工作講座が開かれ、 楽しげな雰囲気の中、会場の人々と紙の星を製作しました。 その後、この星を使い「私の教育宣言」、つまり一人一人に出来る身近なことを書いていただきました。 「大人が批判ばかりしない」「見栄を張ってでも良い"大きな人"になる」という陰山英男氏や高見のっぽ氏の教育宣言や、 長崎宏子氏らしい「水の楽しさを伝える」という子どもへのアプローチ、 更には、清水たかみ氏や鈴木寛氏のように、「学校という多様な子どもが集まる場を先生ではない立場からアプローチしていく」という、 個性あふれる教育宣言がなされました。
来場者インタビュー
五月祭シンポジウム終了直後、来場者の方々に今回のイベントについての感想を伺いました。
「登壇者の話の中で特に心に残ったものはありますか?」
- 同じ母親として、清水たかみさんの話が心に残りました。母親であるという立場から 学校にかかわるということは実際にはなかなか難しく、さらに普段語られない ことであるために参考になりました。
- 鈴木寛先生や陰山英男先生が、一人一人が自分の役割を考えながら責任をもって行動する という一貫した意見を述べていたところが印象に残りました。このイベントの趣旨であるとも受けとれました。
- 陰山先生の「批判ではなく反省を」という言葉に共感を覚えました。
- 高見のっぽさんの"小さい人"を丁寧に一人一人大切に見るということは、教育現場にとって大切な心掛けだと思った。
- 鈴木寛先生の、「居るだけでも子供にとってはありがたい」という言葉が印象に残りました。
来場者の方それぞれの立場によって、心に響く言葉はそれぞれ違ってはいますが、 登壇者の方々の言葉の一つ一つが来場者の教育に対する思いを奮い立てていたのは確かなようです。 また、登壇者が様々な方面からいらっしゃったということもあり、教育に元々興味があった方はもちろん、 普段は教育に携わることのない方にとっても充実したシンポジウムとなったようです。
「今日のイベントを通じて自分では何をしていきたいと思いましたか?」
- 母親として上手に学校に関わっていくことが求められていると思いました。 また、大学生がここまで教育のことについて考えていることを他の人にも知らせたいです。
- 自分のできることを着実に一歩一歩やっていき、子どもに等身大の自分を見せたいです。
- 責任をしっかりもって、自分の役割というものを考えて行動していきたいです。
- スライドで大学生の活動の様子を見て、考えるよりも自分で活動していくことが大事だと思いました。 色々とアクションしていきたいです。
- 英語の教師をしているので、英語を通じて子どもに世界を知ってもらうと思います。
この答えも、十人十色という言葉にふさわしく、一人として同じことを答えた人はいませんでした。 母親として、大学生として、教師として。 さまざまな立場の方が登壇者の方々のお話をヒントに自分が今教育に出来ることを考えてくださいました。 本当に身近なことが、教育への一歩になるという今回のシンポジウムの伝えたいテーマが、来場者の方々にしっかりと伝わったようです。
「次回以降のイベントで企画に取り入れてほしいことや、これからの活動に求めるものはありますか?」
- 文部科学省はコミュニティースクールを推進していて、 地元でもそういった方向性が探られているが、立ち消えになりそうという不安があります。 実際に各地域でどのような状況なのかということが知りたいです。
- 学生ボランティアの実態をもっと詳しく知りたいです。
- 観客を生かしたイベントにしてほしいです。
- 回数を重ねていくことで、多くの人数を拾い上げていくことで全国的な動きにしてほしいです。
- 学生ボランティアが来ていることに対する子どもの生の意見を聞きてみたいです。
- 学生ボランティアが実際にあげている成果を知りたいです。
- イベントをやりっぱなしにするのではなく、HPの学生ブログや他のネット媒体などの 発信の場を積極的に利用して、話を深めていってほしいです。
様々な意見から、来場者の方々が当団体のこれからの活動に期待してくださっていることがよくわかりました。 実際の地域の現状や、子どもの声など、なかなか拾い上げられない事実を知りたいという方が多く、教育への関心の深さがうかがえます。
これらの貴重なご意見を踏まえて、これからの当団体の今後の活動をより良いものにしていこうと思っております。 皆様本当にありがとうございました。
登壇者インタビュー
五月祭シンポジウムにおいて登壇をして下さった陰山英男氏、鈴木寛氏、清水たかみ氏、高見のっぽ氏、長崎宏子氏に、 講演終了後、それぞれインタビューをさせていただきました。
「今回の講演にあたって、どのような心構えで臨みましたか?」
- 陰山英男氏
教育学を極めようとする人たちの集まりである東大。 日本の最高学府での講演ということもあり、気を引き締めて臨みました。 - 鈴木寛氏
子どものころからのファンであるのっぽさんに会い、声が聞けるのを純粋に楽しみにしていました。 - 清水たかみ氏
企画の段階で、主催者である大学生の意気込みを感じていて、自分も役立とうという思いで来ました。 - 高見のっぽ氏
人間は本来群れなければ生きていけない生き物です。 他人との関わりが薄れている現代の若い人々に絶望していましたが、 この企画の大学生はそのような問題に対しての 強い意識があると感じたために引き受けました。 - 長崎宏子氏
学生がすべて企画しているということで楽しみにしていました。 オリンピックスイマー、水泳教室など、自分しかしていない経験を生かし、 教育について感じていることを素直に伝えようと思いました。
「実際にお話をなされた感想はいかがでしたか?」
- 陰山英男氏
ゆとり教育が終わり、新しい指導内容も未だ不透明で、 世間では教育ブームは凪状態。 今回も人々の反応の薄さを心配していましたが、 メモをとる姿などから教育に対しての熱意を感じて、 それが杞憂だったことに気がつきました。 - 鈴木寛氏
会場全員でのっぽさんと工作をしたことで参加意識が高まり、 よい雰囲気になったと思います。また、一人一人の胸の奥に残ったのではないかと感じました。 学生のころの自分にとって東大とは入学試験、期末試験、卒業試験などの戦いの場でありましたが、 今回の講演によって、楽しみの場へと変わりました。 - 清水たかみ氏
会場を見渡した限り、寝ている人がいないことに驚きました。 老若男女、さまざまな人が熱心に傾聴していることが伝わってきて、とてもうれしかったです。 - 高見のっぽ氏
作り手も真面目であるなら聞き手も真面目。若い人々への絶望も、 今回は感じることがありませんでした。 - 長崎宏子氏
人集めのために義理で来ているような人はほとんどおらず、 教育に関心のある人ばかりのように感じました。 教育に携わるというのは子ども達のためでもあるが、 自分達(大人達)のためでもあると思います。 子どもが元気でいるということは、自分も嬉しいものですから。
五人の方々の熱意あるお話によって、日本の教育への新たな視座が作られたのではないかと感じました。
第一部、第二部、第三部と様々な立場から教育に携わる登壇者の方々の話を交えつつ、 自分の考える教育とは何か、そして、今自分たちに何が出来るのかについての考えを深めていきました。 今回の教育フォーラムを通してのキーワードの一つでもある「ナナメの関係」。 タテでもヨコでもない、あなただからこそ関われる教育のあり方がそこにはあるのです。 教育は学校のなかだけではなく、それぞれの立場で関わることのできるもの。 例えば、「赤信号を渡らない」こと。そのような小さく、当たり前のことからでも広い意味での教育につながっていくのではないでしょうか。 皆様方のその一歩から、すでに「教育」が始まっているのです。 「小さい人」と接する時は、お互いに大きくなりうる影響を与え合っているということを忘れないで見てください。
お忙しい中たくさんの来場者の方々に会場まで足を運んでいただき、 誠にありがとうございました。少しでも教育というものが自分の身近にあり、 ちょっとしたことからでも教育に関わることができるのだ、ということがわかっていただけましたら幸いです。 シンポジウムに参加いただいた方が教育宣言を真剣に考えてくださっていました。 その姿勢だけでもまず一歩が踏み出せているのだと思います。 あなたも、自分なりの教育宣言をしてみてはいかがでしょうか?


















