主催:NPO法人日本教育再興連盟

(文部科学省 先導的教育情報化推進プログラム・研究成果中間発表会)

2007年12月23日、立命館大学衣笠キャンパス(京都)にて「第2回 学力向上セミナー」が開催されました。文部科学省先導的教育情報化推進プログラム・研究成果中間発表会でもある本セミナーは、全国の学力向上へ向けた取組みの発表、学力向上へ向けた講座、教師による教育実践オーディションが行われました。こちらでは、内容をご報告します。


【1】陰山英男 講演「学力向上の新たな段階」
【2】学力向上へ-全国の教育実践の発表
【3】学力向上実践講座
【4】教育実践オーディション


【1】陰山英男 講演「学力向上の新たな段階」

子供の幸せは元気から生まれる~早寝早起き朝ごはんと基礎基本~


陰山先生の講演は、まず「今の教育の何が問題か?」という点から始まりました。現在、グローバル化が始まっているにも関わらず、教育が国内問題や過去問題からしか考えられておらず、国内問題としても実態が理解されていないということを問題点にあげられていました。具体的には、PISA調査や教育費の国際比較や、土曜日授業や未履修問題、新しい指導要領などの国内問題の分析を通じて、資料に当たることの重要性を説いていました。

次に、そのような問題点をふまえ、「今の教育において何を準備するべきか?」という点に話を移しました。生活習慣の着実な向上(早寝早起き朝ごはん運動)を学力向上とセットで行うことの必要性を説くとともに、その具体的な実践方法を、データを駆使しながらわかりやすく解説されました。

最後に、日本教育再興連盟の今後の展望を提示され、講演は盛況のうちに終わりました。


【2】学力向上へ-全国の教育実践の発表

山口県山陽小野田市教育委員会 江澤正思教育長

「『生活改善・学力向上プロジェクト」の成果とその分析」

山口県山陽小野田市では平成18年4月より、市内の全小学校で「生活改善・学力向上プロジェクト」に取り組んでいます。江澤教育長は生活習慣の改善によって、児童が二つの「が」の力-がんばる力,がまんする力-をつけることができるため、結果として学力向上に繋がることを詳細な分析結果を用いて、発表してくださいました。


高知県室戸市教育委員会 米倉由佳指導主事

「室戸市内の中学校における反復学習の取組について」

室戸市内の7つの中学校では、平成18年から、それぞれの学校の実情に合わせて、反復学習をベースとした取り組みで、生徒の学力の向上を目指しています。米倉さんは、実際に室戸市内の羽根中学校で、国語・数学の授業の始めと終わりに行われている反復学習や、室戸中学校で段階的に反復学習の内容の充実を図ってきたことを発表してくださいました。


京都府八幡市教育委員会 中島正恭先生

「DSソフトを活用した『見て・聞いて・書いて』の英単語学習の取組」

八幡市では2005年11月に「八幡市学校UD(ユニバーサルデザイン)化構想」を策定し、その実現に向けて取り組んでいます。具体的には、総合基礎科の時間に、市内4中学校の2年生全員に1人1台ずつDSソフトを使用することで反復学習のやる気を引き出し、英語の基礎力向上を目指しています。中島先生はDSソフトの特徴や課題を提示した後、DSによる学習は英語指導の一部であり、反復練習による語彙力の向上が第一のねらいであることを話してくださいました。

※年齢や障害の有無などにかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすること。


東京都港区立青山小学校 曽根節子校長

「学力向上・生活改善に向けたパワーアップ学校経営」

青山小学校では、平成18年度4月より、学力向上・生活改善プロジェクトの一環として学習意欲や学習習慣を身につけることをねらいとしたプロジェクトがスタートしました。具体的には学力向上の基礎を築くことを目的として、「陰山メソッド」を導入しました。曽根先生は導入の経緯や戦略を発表された後、タブレットPCなどのICTを取り入れた「NEXTプロジェクト」の導入についても発表してくださいました。


宮城県栗原市立築館小学校 八巻秀先生

「アタックタイムで学力向上を」

築館小学校では、「アタックタイム」と名づけたモジュール授業の時間の活用と授業環境の改善により、着実に児童の学力向上の成果を上げています。八巻先生は、学力向上の成果を「校内研究」を通してフィードバックし、教師の指導力向上に結びつけるというサイクルの実現が取組のポイントであることを話してくださいました。


佐賀県白石町立白石小学校 棚町剛先生

「学びの二重奏」

白石小学校では「学習力づくり」と「授業力づくり」をテーマとし、学習力である集中力・持続力・克服力を高め、これを学力向上に結びつけるために生活習慣・学習習慣の改善を進めるとともに、モジュールタイムの充実を図って学習の土台づくりを行っています。棚町先生は、この二つのテーマを音楽に例えて楽しく発表をしてくださいました。


【3】学力向上実践講座

尾道市立土堂小学校 山根僚介先生

「手軽・簡単!ICT活用法」

山根先生はまず、ICTを活用した授業の効果として、1.教師の指示が明確化する、2.児童が集中力を持続できる、という2点を、挙げていました。その後、実際にプロジェクタと実物投影機をつなぎ、社会、算数、国語、理科等のあらゆる授業で容易に用いることが可能だと説明されていました。最後にはタブレットPCを用いた反復学習を紹介し、ICT教材を用い、効果を上げる重要性を述べていました。参加者した方々も、機材は学校にあるものの、それをうまく活用する方法がわからなかったようでしたが、山根先生の実践を聞いて、意外にも簡単に授業に取り入れられるのではないかという印象を持たれたようでした。


日本教育再興連盟 教育事務局・東京本部長 三橋勉先生

「学習カードカルタで学力向上」

三橋先生はまず、参加者にカードカルタの面白さを実感してもらおうと、参加者に都道府県のカードカルタを手渡し、実践しておられました。カードは、わかりやすく色別に分けられ、また対戦できるようにポイントも書かれていました。他にも、歴史人物、百人一首などのカルタも紹介され、どんなものでもカードカルタに応用できると述べられていました。大学生から先生まで、参加者は、ゲーム感覚で学習に取り組めるカードカルタの楽しさに魅せられ、終了時間が来ても熱心に取り組んでいる様子でした。


立命館小学校 仲里靖雄先生

「算数の教材構成法」

仲里先生は、算数の授業の中に、「発見」をうまく組み込むことにより、子どもたちは算数を「習った」ではなく、「創った」という意識をもつということを、確かめ算や円の問題などを例にとって、わかりやすく説明されました。さらには、「算数を創る授業」「発見を生み出す授業」を構成するために、数値変更、条件不足、条件過多、仲間分け、不公平、ランダム→整理という6つの視点をもって教材を見ることが、本当の教材研究だという鋭い分析に、会場からは驚きの声も上がっていました。


立命館小学校 深谷圭助先生

「辞書引きで子どもの脳を鍛える」

深谷先生は、まず、多くの一流の人達が自学により大成したことを例にとって、自分で学ぶきっかけを与えるという意味で、早い段階で辞書に触れさせることの重要性を述べていました。次に、付箋や「どっきり!はてな?帳」など独自の辞書の活用法を準備編、実践編、応用編に分けて、わかりやすく説明されました。辞書引きの本質は、教科書通り高く積み上げるのではなく、裾野を広げて様々なことに関心を与えることにあるという深谷先生の見解に、会場は納得した様子でした。


京都市立勧修小学校 村田香織先生

「学校ぐるみで学力向上に取り組む方法」

村田先生はまず、勧修小学校で行われている「モジュール学習」について、実際のモジュール授業の実践の様子を映像も交えて発表されました。モジュール学習を取り入れることによって、学力が向上するとともに、児童の意欲向上という成果もあがっているということです。モジュール学習の成功の秘訣として、(先生方の)協力、継続、(保護者の)理解、(数値化することでの)検証、(学校間の)交流の5つを提示されていました。このポイントには参加者の方々も納得したような様子でした。


尾道市土堂小学校 藤井弘之先生

「モジュール授業実践(音読・百ます計算・英文音読)」

藤井先生は土堂小学校で行われているモジュール授業を、実際に参加者を巻き込んだ模擬授業を行いながら、楽しく発表されました。模擬授業では、実際に島崎藤村の『初恋』を題材にした音読や、百ます計算の授業を行うだけでなく、具体的な指導方法をレクチャーされていました。モジュール授業において、「スピード・テンポ・タイミング」がキーワードとされた藤井先生の授業は、参加されている先生方や大学生を引き付け、参加者全員が、「大人」であることを忘れたように、必死になって音読や百ます計算をしている様子も印象的でした。


【4】教育実践オーディション

司会:三橋勉先生
評価:陰山英男先生、横山英行さん(小学館)


1. 広島県福山市御幸小学校 高延和敏先生

「意欲を高め理解を深める教具の利用について」

教具をうまく利用することによって、子ども達に意欲を持たせ、自分は「できる」という自信を与えたいとおっしゃっていました。実際に、角度、容積、季節風などを説明する教具を紹介していました。



2. 与那国町立比川小学校 崎山美和先生

「スパイラル効果をねらった言語指導~辞書引き、音読、部首カルタの実践より」

自校における週三回の音読、計算、辞書引きのモジュール授業を紹介し、児童が学習の構えをできるようになったことを説明していました。また、そこから発展して、児童が他教科でも、自主性をもって授業に取り組む様子を伝えていました。



3. 松山市立窪田小学校 小早川誠二先生

「教師が創る校内LANスタイル」

校内LANを使うことによって、児童が自分のペースで学習でき、教師も個々に対応した指導ができるとおっしゃっていました。実際に自作計算ソフトを活用している様子も印象的でした。



4. 三浦市立初声小学校 鈴木夏来先生

「学習カード&トレカで学級経営」

カードカルタを用いて、古典などを暗唱する取り組みを紹介していました。古典などの難しいものも、カードカルタを使えば、いつでもどこでも気軽に覚えられる上、家族のコミュニケーションツールにもなりうると説明していました。



5. 横浜国立大学教育人間学部付属横浜小学校 長沼武志先生

「実録楽曲歌留多」

長沼先生自身も音楽が苦手だったそうですが、カードカルタを取り入れることによって一年生でも有名な音楽家とその代表曲がすらすらと暗記できるとおっしゃっていました。音楽を聴き、耳を鍛えるだけでなく、ゲームのルールを学ぶ場としても効果があると説明されていました。



6. 八幡市立中央小学校 岡村淳史先生

「デジタル100マス計算の取組」

小学校高学年の児童が1桁の計算も定着していないという問題意識から、速く正確に計算する力をつけることを目的として、デジタル100マス計算を考案したとのことでした。自作のソフトを児童が休み時間や授業前に取組み、効果があったとおっしゃっていました。



7. 横浜市立都岡小学校 関根達先生

「誰でもできる漢字指導」

関根先生は、クラスの漢字力を飛躍的に挙げる実践方法を紹介していました。それは、前倒し学習、個別弱点指導等により、漢字に触れさせる時間を多く取るということでした。また、漢字学習は自主学習の土台作りに役立つとも説明されていました。